中性子科学研究系 月例研究報告 6月
2011 年6 月14 日
1. 共同利用などに関して
【海外中性子施設の利用】
東日本大震災による実験停止により実施できなくなったJ-PARC/MLF における中性子実験課題の一部を、アメリカ・オークリッジ国立研究所のSNS 及びロス・アラモス国立研究所のLANSCE により実施することになった。これらの課題のうち大学共同利用課題に関しては、KENS から旅費などのサポートを行う予定である。
2. 研究グループの活動状況
(1) ソフトマターグループ
【研究成果】
界面の弾性力の不安定性による油滴の自発運動水の上に浮かべた油滴が自発的に運動する現象について、実験データの詳細な解析と理論的考察により明らかにした。論文は英国Royal Society of Chemistry の雑誌SoftMatter より出版され、Hot Article に取り上げられた。
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図1 油滴の変形の時間変化とその概念図。
Y. Sumino, H. Kitahata, H. Seto, and K. Yoshikawa, “Dynamical blebbing at a droplet interface driven by instability in elastic stress: a novel self-motile system”, Soft Matter 7, 3204 (2011).
【BL16 高性能試料水平型中性子反射率計】
被害調査報告
確認が終わっていなかったT0 チョッパーの点検作業を行い、定格回転数(25Hz)にて問題なく動作することを確認した。これにより、地震による被害調査はほぼ完了し、大きな問題は起きていないことを確認した。今後、念のため反射率計の最重要部の1 つである中性子スリットについて精密点検を行う予定である。
(2) 量子物性グループ
【BL12(HRC)高分解能チョッパー分光器】
HRC に図2 に示すDAQ システムをインストールして、データ集積及びデータ解析が可能になった成果を論文にまとめて、投稿していたが、査読が終了し、次のように掲載が決定された。
S. Yano, S. Itoh, S. Satoh, T. Yokoo, D. Kawana, and T. J. Sato, “Data Acquisition System for High Resolution Chopper Spectrometer (HRC) at J-PARC”, Nucl. Instr. Meth. Phys. Res. A (2011), in press.
図2 HRC にインストールしたDAQ システム(S. Yano et al., NIMA in press)
被害調査報告
T0 チョッパーに冷却水を通水して回転試験を行ない、100Hz まで異常のないことを確認した。これにより、HRC の被害状況を確定した。ガイド管、フェルミチョッパー等にもほとんど損傷がないことを確認しており、震災の被害は、PSD(有効長2.8m、9 本)の損傷、遮蔽体のずれ、遮蔽体等固定部の損傷であった。6 月13 日から遮蔽体の復旧工事を開始する予定である
(3) 水素貯蔵基盤研究グループ
【BL21(NOVA) 高強度全散乱装置】
被害調査報告
T0 チョッパーおよびフェルミチョッパーの回転試験を行ない、定格運転が可能であることを確認した。フェルミチョッパーについては、回転位相の制御に若干時間がかかっており、確認を継続する。また、チョッパー類の周辺の遮蔽体(前置遮蔽体)が、地震によりずれており、遮蔽体の位置の修正や固定方法の強化等を夏期に実施予定である。
リートベルト解析の定常化
粉末グループにより開発されたリートベルト解析ソフトウエア(Z-Rietveld)を用いた粉末結晶構造解析が、NOVA において問題なく実施できる事を標準試料により確認した。これにより、測定から各種補正を経て、リートベルト解析を行う流れを確立することができた。現在の補正による回折ピーク強度の相対値の信頼性は確認できたので、さらに絶対値補正の精度を高めるべく、解析ソフトウエアの開発を進めている。
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図3 NOVA により測定したNIST 標準試料(シリコン粉末、640d)の回折パターンのリートベルト解析結果。上図が背面検出器バンク、下図が90 度検出器バンクである。

